妊娠を機に退職はもったいない?後悔しないための判断基準と手当金の活用法を解説

妊娠がわかり、退職を考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし「妊娠を機に退職するのはもったいないのでは?」と悩む方も少なくありません。

結論からお伝えすると、産休・育休制度や各種手当金を活用せずに退職するのは、金銭面で大きな損失になる可能性があります。

一方で、体調や家庭環境によっては退職が正解というケースもあります。

この記事では、妊娠を機に退職することのメリット・デメリット、退職のベストなタイミング、受け取れる手当金について詳しく解説します。

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妊娠を機に退職すると「もったいない」と言われる5つの理由

妊娠を機に退職を検討する方は多いですが、周囲から「もったいない」と言われた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この「もったいない」という言葉には、金銭面やキャリア面での損失が大きいという意味が込められています。

実際に退職することで失われるメリットは想像以上に大きく、総額で数百万円の差が出ることもあります。

ここでは、退職が「もったいない」と言われる具体的な5つの理由を詳しく解説していきます。

産休中も会社に在籍できるメリットを失う

産休(産前産後休業)は、労働基準法で定められた働く女性の権利です。

産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と産後8週間の休業が認められており、この期間中も会社に在籍し続けることができます。

在籍していれば、健康保険や厚生年金の被保険者資格を維持できるため、将来の年金額にも影響します。

また、産休中は社会保険料が免除される制度もあり、会社負担分・本人負担分ともに支払いが不要になるのです。

退職してしまうと、これらの恩恵を受けることができなくなってしまいます。

項目産休取得の場合退職の場合
社会保険料免除される国民健康保険等に加入し負担発生
年金の被保険者資格厚生年金を継続国民年金に切り替え
会社との雇用関係継続終了

育児休業給付金(最大180日間は給与の67%)が受け取れなくなる

育児休業給付金は、育休を取得した際に雇用保険から支給される給付金です。

育児休業を開始してから180日までは休業開始時賃金日額の67%が支給され、181日以降は50%に減額されます。

さらに、2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が創設され、両親がそれぞれ14日以上の育休を取得すると、既存の育児休業給付金に13%が上乗せされ、最大28日間は合計80%相当の給付が受けられるようになりました。

退職してしまうと、この育児休業給付金を受け取る権利を完全に失ってしまいます。

仮に月収25万円の方が1年間育休を取得した場合、受け取れる金額は以下のようになります。

  • 最初の180日間(約6ヶ月):25万円 × 67% × 6ヶ月 = 約100万円
  • 残りの期間(約6ヶ月):25万円 × 50% × 6ヶ月 = 約75万円
  • 合計:約175万円

この金額を受け取れないのは、大きな損失といえるでしょう。

出産手当金の受給条件を満たせない可能性がある

出産手当金は、健康保険に加入している女性が出産のために仕事を休んだ際に支給される給付金です。

支給期間は、出産日以前42日(多胎の場合は98日)から出産日後56日までの範囲内で、労務に服さなかった期間について支給されます。

退職後も出産手当金を受け取れる場合がありますが、条件があります。

被保険者の資格を喪失した日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があることが必要です。

また、退職日当日に出勤していない(仕事を休んでいる)ことも条件となります。

退職日に引き継ぎなどで出勤してしまうと、出産手当金を受け取れなくなる可能性があるため注意が必要です。

社会保険料の免除制度が活用できない

産休・育休中は、申請により社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されます。

この免除は会社負担分と本人負担分の両方が対象となり、免除期間中も被保険者資格は継続されます。

さらに、免除された期間も将来の年金額を計算する際には保険料を納めた期間として扱われるため、年金額が減ることもありません。

退職すると、国民健康保険や国民年金に加入する必要があり、これらの保険料を自己負担しなければなりません。

保険の種類産休・育休中(在籍)退職後
健康保険料免除国民健康保険料を全額負担
年金保険料免除(年金額に影響なし)国民年金保険料を負担

復職という選択肢がなくなりキャリアにブランクができる

退職してしまうと、当然ながら元の職場に復帰するという選択肢がなくなります。

産休・育休を取得すれば、育児が落ち着いた後に同じ職場・同じポジションで働き続けることが可能です。

一方、退職してから再就職しようとすると、ブランクがあることで採用時に不利になるケースも少なくありません。

特に専門性の高い職種や管理職の場合、キャリアの中断は大きな痛手となることがあります。

「とりあえず辞めてから考える」という判断は、将来の選択肢を狭めてしまう可能性があることを覚えておきましょう。


妊娠を機に退職するベストなタイミングはいつ?

やむを得ない事情で退職を選択する場合でも、タイミング次第で受け取れる手当金の額が大きく変わります。

退職日を1日ずらすだけで、数十万円の差が出ることもあるのです。

ここでは、損をしないための退職タイミングについて詳しく解説します。

退職時期によって受け取れる手当金が変わる

退職時期を決める際に最も重要なのは、各種手当金の受給条件を満たすかどうかです。

特に出産手当金は、退職日が支給期間内(産前42日〜産後56日)に含まれていないと受給できません。

また、退職日に出勤してしまうと、継続給付の条件を満たさなくなってしまいます。

以下の表で、退職時期による手当金の受給可否を確認しましょう。

退職時期出産手当金育児休業給付金出産育児一時金
産前42日以前条件付きで受給可能受給不可受給可能
産前42日〜産後56日受給可能受給不可受給可能
育休取得後受給済み受給可能受給済み

出産予定日から逆算して退職日を決める方法

出産手当金を確実に受け取るためには、出産予定日から逆算して退職日を設定する必要があります。

具体的には、出産予定日の42日前(約6週間前)以降に退職日を設定することがポイントです。

例えば、出産予定日が7月15日の場合、6月4日以降が産前休業期間となります。

この期間内に退職日を設定し、かつ退職日当日は出勤しないようにしましょう。

出産予定日が7月15日の場合の計算例

  • 産前休業開始日:7月15日 − 42日 = 6月4日
  • 退職日の目安:6月4日以降
  • 注意点:退職日当日は出勤しない

退職届を出す前に確認すべき就業規則のポイント

退職届を提出する前に、必ず会社の就業規則を確認しておきましょう。

確認すべき主なポイントは以下のとおりです。

  • 退職届の提出期限(何日前までに提出が必要か)
  • 産休・育休制度の詳細(取得条件、期間など)
  • 退職金の支給条件(勤続年数による違いなど)
  • 有給休暇の残日数と消化方法

また、人事部門や総務部門に相談することで、自分が受け取れる手当金や退職金の正確な金額を把握できます。

引用:厚生労働省「育児休業等給付について」 育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が育児休業を取得する際に支給される給付金です。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html


妊娠・出産で受け取れる4つの手当金と受給条件

妊娠・出産に関連して受け取れる手当金は複数あります。

それぞれの制度を正しく理解し、もれなく申請することが大切です。

退職するかどうかに関わらず、まずはどのような手当金があるのかを把握しておきましょう。

出産育児一時金|誰でも50万円を受給できる制度

出産育児一時金は、健康保険に加入している方が出産した際に受け取れる一時金です。

公的医療保険の加入者が出産したとき、お子さん1人につき原則50万円が支給されます。

この制度は、会社員だけでなく、国民健康保険に加入している自営業者やフリーランスの方、専業主婦で配偶者の扶養に入っている方も対象となります。

つまり、退職後でも健康保険に加入していれば受給可能です。

また、直接支払制度を利用する場合、出産施設に直接出産育児一時金が支給されるため、本人が窓口で支払う金額は費用の総額から50万円を差し引いた残りの額となります。

項目内容
支給額1児につき50万円(産科医療補償制度未加入の場合は48.8万円)
対象者健康保険・国民健康保険の加入者
申請方法直接支払制度、受取代理制度、償還払いのいずれか

出産手当金|産前産後の収入をカバーする給付金

出産手当金は、会社の健康保険に加入している女性が産休中に受け取れる給付金です。

被保険者が出産のために仕事を休み、その期間の給与等が減額またはもらえないときに休業補償として支給されます。

支給額は、直近12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額の3分の2です。

例えば、標準報酬月額が30万円の場合、1日あたり約6,667円が支給されます。

産前42日+産後56日=98日間の場合、約65万円を受け取れる計算になります。

出産手当金の支給条件

  • 勤務先の健康保険に加入していること(国民健康保険は対象外)
  • 妊娠4ヶ月(85日)以降の出産であること
  • 出産のために休業していること

育児休業給付金|最長2年間受け取れる手当

育児休業給付金は、育休を取得した際に雇用保険から支給される給付金です。

原則として子どもが1歳になるまで受給できますが、保育所に入れないなどの理由がある場合は最長2歳まで延長できます。

支給額は、休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%で計算されます。育児休業開始から181日目以降は、支給率が50%となります。

なお、支給額には上限額と下限額が設定されており、2025年7月31日までの上限額は15,690円(日額)です。

育児休業給付金を受け取るための主な条件

  • 雇用保険に加入していること
  • 育児休業開始前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
  • 育児休業期間中、会社から給与が支払われていない(または80%未満である)こと

失業手当(基本手当)|退職後の再就職活動をサポート

失業手当(雇用保険の基本手当)は、退職後に再就職活動を行う方を経済的にサポートする制度です。

妊娠や出産、育児などで一定期間働けない、または求職活動をしにくい状況が見込まれる場合は給付の対象になりません。

ただし、受給期間の延長手続きを行うことで、出産後に求職活動を始めてから受給することが可能です。

支給額は、離職前6ヶ月間の賃金をもとに計算され、おおむね離職前賃金の50〜80%程度となります。

項目内容
支給額の目安離職前賃金の50〜80%程度
所定給付日数90日〜330日(離職理由・年齢・被保険者期間により異なる)
受給期間原則として離職日の翌日から1年間

退職後でも失業手当を受け取る方法と注意点

妊娠を理由に退職した場合でも、失業手当を受け取る方法があります。

ただし、通常の退職とは異なる手続きが必要になるため、正しい知識を身につけておきましょう。

妊娠中は失業手当をすぐに受け取れない理由

失業手当は、すぐに働ける状態であることが条件のため、妊娠を理由に退職した場合は失業手当を受給できません。

失業手当は、求職活動を行い、就職する意思と能力がある方を対象とした制度です。

妊娠中は体調面や出産の準備などで、すぐに働くことが難しいと判断されます。

そのため、妊娠を理由に退職した場合は、通常の失業手当の手続きではなく、受給期間の延長手続きを行う必要があります。

受給期間の延長手続きで最大4年間の猶予を確保する

本来の受給期間である1年に、「働けない時期」として加えることができる期間は最大3年です。つまり離職した日の翌日から最長4年以内まで受給期間を先延ばしにできます。

延長手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 退職日の翌日から30日経過後に手続きが可能になる
  2. ハローワークに「受給期間延長申請書」を提出する
  3. 必要書類(離職票、母子手帳など)を準備する
  4. 延長が認められると、働ける状態になってから受給開始

申請に必要な書類は、受給期間延長申請書、雇用保険被保険者離職票、延長理由を確認できる書類(母子手帳など)、印鑑です。

出産後に求職活動を始めれば受給が可能になる

出産後、育児が落ち着いて働ける状態になったら、ハローワークで求職の申し込みを行います。

働ける状態になった時点で受給手続きをすれば、基本手当の給付を受けながら求職活動を始めることができます。

「妊娠や出産、育児(3歳未満)のために離職し、受給期間の延長措置を受けた人」は「特定理由離職者」にあたり、離職前の1年間に被保険者だった期間が通算6か月以上あれば受給の資格があるとされています。

特定理由離職者に該当すると、通常の自己都合退職よりも有利な条件で失業手当を受け取れる場合があります。


妊娠で退職する前に職場へ伝えるべきことと円満退職のコツ

退職を決意したら、職場への報告と引き継ぎを適切に行うことが大切です。

円満に退職することで、将来的に同じ業界で働く際にも良好な関係を維持できます。

上司への報告は早めに|安定期に入ったら相談する

妊娠の報告は、安定期(妊娠5ヶ月頃)に入ってから行うのが一般的です。

ただし、つわりがひどい場合や、体調に不安がある場合は、早めに相談しても問題ありません。

報告の際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 出産予定日を伝える
  • 退職の意思がある場合はその旨を伝える
  • 引き継ぎのスケジュールについて相談する
  • 今後の体調管理について理解を求める

上司への報告後、人事部門にも正式に連絡し、必要な手続きについて確認しましょう。

引き継ぎ資料の作成で職場への負担を最小限にする

円満退職のためには、しっかりとした引き継ぎが欠かせません。

引き継ぎ資料には、以下の内容を含めるとよいでしょう。

  • 担当業務の一覧と各業務の手順
  • 取引先や関係部署の連絡先リスト
  • 進行中のプロジェクトの状況と今後の予定
  • よくあるトラブルと対処法
  • 使用しているシステムやツールの操作方法

早めに資料作成を始め、後任者と一緒に業務を行う期間を設けられると理想的です。

退職理由の伝え方|角が立たない言い回しの例

退職理由を伝える際は、ネガティブな表現を避け、前向きな言葉を選びましょう。

おすすめの伝え方の例

  • 「出産・育児に専念するため、退職させていただきたいと考えております」
  • 「家庭との両立を考え、一度仕事を離れる決断をいたしました」
  • 「これまで大変お世話になりました。妊娠を機に、家庭を優先することにいたしました」

会社への不満がある場合でも、退職時に伝える必要はありません。

感謝の気持ちを伝えつつ、円満に退職することを心がけましょう。


妊娠を機に退職するか迷ったときの判断チェックリスト

退職するか働き続けるかは、さまざまな要素を総合的に判断する必要があります。

以下のチェックリストを参考に、自分にとって最適な選択を考えてみましょう。

経済面|退職後の生活費と手当金のシミュレーション

まずは、退職した場合と働き続けた場合の収入を比較してみましょう。

退職すると、育児休業給付金を受け取れなくなるため、収入面では大きな差が出ます。

収入シミュレーション(月収25万円の場合)

項目産休・育休取得退職
出産育児一時金50万円50万円
出産手当金約54万円条件付きで受給可能
育児休業給付金(1年間)約175万円0円
失業手当なし延長後に受給可能

退職後の生活費を、貯蓄や配偶者の収入でまかなえるかどうかも確認しておきましょう。

体調面|働き続けられる健康状態かどうか

妊娠中は体調の変化が大きく、無理をすると母体や赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。

以下のような症状がある場合は、医師に相談のうえ、休職や退職を検討しましょう。

  • つわりがひどく、出勤が困難
  • 切迫流産・切迫早産の診断を受けた
  • 妊娠高血圧症候群などの合併症がある
  • 医師から安静を指示されている

ただし、一時的な体調不良であれば、傷病休暇や時短勤務で対応できる場合もあります。

職場環境|時短勤務やリモートワークの制度は使えるか

会社に以下のような制度があるかどうかを確認しましょう。

  • 時短勤務制度(3歳未満の子どもがいる場合、法律で義務化されています)
  • フレックスタイム制度
  • リモートワーク・在宅勤務制度
  • 看護休暇(子どもの病気やケガの際に使える休暇)

これらの制度を活用できれば、育児と仕事を両立しやすくなります。

制度があっても実際に使いにくい雰囲気がないか、先輩ママ社員に聞いてみるのもよいでしょう。

家族のサポート体制|育児や家事の分担は可能か

育児は一人で抱え込むものではありません。

配偶者や両親など、サポートしてくれる人がいるかどうかも重要な判断材料です。

確認しておきたいポイントは以下のとおりです。

  • 配偶者の育児・家事への協力体制
  • 両親や義両親のサポートは期待できるか
  • 保育園や一時預かりサービスの利用可能性
  • 家事代行サービスなどの活用を検討できるか

サポート体制が整っていれば、仕事を続けながら育児をすることも十分可能です。


よくある質問

Q. 妊娠を機に退職するメリットは何ですか?

体調管理に専念できる、育児に集中できる、精神的なストレスから解放されるなどのメリットがあります。

特に、つわりがひどい方や、職場環境にストレスを感じている方にとっては、退職によって心身の負担が軽減されることがあります。

一方で、収入がなくなる・キャリアにブランクができるなどのデメリットもあるため、総合的に判断することが大切です。

自分の体調や家庭環境、将来のキャリアプランなどを考慮して、後悔のない選択をしましょう。

Q. 妊娠何ヶ月で仕事を辞めた人が多いですか?

一般的には妊娠5〜7ヶ月(安定期〜妊娠後期の手前)で退職する方が多い傾向にあります。

安定期に入ると体調が落ち着き、引き継ぎなどの業務を行いやすくなるためです。

また、産前休業に入る6週間前までに退職するケースが見られます。

ただし、体調や職場環境によって最適なタイミングは異なりますので、無理のない範囲で決めましょう。

Q. 産休と失業保険はどちらが得ですか?

金銭面だけで比較すると、産休を取得して出産手当金・育児休業給付金を受け取る方が総額は多くなるケースがほとんどです。

産休・育休を取得した場合、出産手当金(約50〜70万円)+育児休業給付金(100万円以上)を受け取れます。

一方、失業保険は出産後すぐには受け取れず、受給期間の延長手続きが必要になります。

可能であれば産休・育休を取得してから退職を検討するのがおすすめです。

Q. 妊娠中に無職だと手当はもらえませんか?

妊娠中に退職して無職になった場合でも、出産育児一時金(50万円)は受け取ることができます。

この一時金は、健康保険や国民健康保険に加入していれば、誰でも受給可能です。

また、退職前に健康保険に1年以上加入していた場合は、退職後でも出産手当金を受け取れる可能性があります。

失業手当は受給期間を延長すれば、出産後に求職活動を始めてから受け取ることが可能です。