社会保険給付金とは?退職前後にもらえるお金の種類・条件・手続きをやさしく解説

「退職したいけど、しばらく収入がなくなるのが不安…」

「病気で働けなくなったら、生活費はどうすればいいんだろう」

そんな悩みを抱えている方は、決して少なくありません。

実は、会社員として社会保険料を毎月支払っている方には、退職前後にまとまったお金を受け取れる制度がいくつも用意されています。

それが「社会保険給付金」と呼ばれるものです。

知っているかどうかで数十万円〜数百万円の差がつくこともあるため、退職を考え始めた段階で正しい情報を押さえておくことがとても大切です。

この記事では、社会保険給付金の種類や受給条件、申請の流れからよくある疑問まで、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説していきます。

「手続きが複雑で自分一人では不安…」という方は、退職前後のお金の悩みを無料で相談できる窓口もあります。 まずは自分がいくら受け取れるのか、下記のリンクからチェックしてみてください。

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社会保険給付金とは?退職時に受け取れるお金の正体

社会保険給付金という言葉を耳にしても、「具体的に何を指すの?」と疑問に思う方がほとんどではないでしょうか。

この章では、社会保険給付金の基本的な意味と、混同されやすい失業保険との違いについて整理します。

退職を検討し始めたら、まずこの全体像を押さえておくことが、損をしないための第一歩になります。

社会保険給付金は「複数の公的手当をまとめた呼び名」

社会保険給付金とは、健康保険や雇用保険、厚生年金保険といった公的社会保険から支払われる各種手当を総称した呼び方です。

法律上「社会保険給付金」という正式な制度名があるわけではなく、あくまで複数の給付制度をわかりやすくひとまとめにした呼称として使われています。

具体的にどんな制度が含まれるかというと、おもに次のようなものがあります。

  • 傷病手当金(健康保険から支給)
  • 失業手当/基本手当(雇用保険から支給)
  • 出産手当金(健康保険から支給)
  • 育児休業給付金(雇用保険から支給)
  • 介護休業給付金(雇用保険から支給)
  • 高額療養費(健康保険から支給)
  • 障害年金・遺族年金(厚生年金保険から支給)

つまり、毎月の給与から天引きされている社会保険料は、こうした「いざというとき」のための積み立てでもあるのです。

保険料を支払い続けているのに給付金を申請しないのは、使える権利を放棄しているのと同じことだといえます。

失業保険との違いを押さえよう

「社会保険給付金って、要するに失業保険のことでしょ?」

そう思われがちですが、両者はイコールではありません。

失業保険(正式名称は「雇用保険の基本手当」)は、社会保険給付金に含まれる制度のひとつにすぎません。

比較項目社会保険給付金失業保険(基本手当)
意味公的保険から受け取れる手当の総称雇用保険から支給される求職中の手当
支給元健康保険・雇用保険・厚生年金など複数雇用保険のみ
対象になる場面病気・退職・出産・介護など幅広い離職後の求職活動中のみ
受け取れる期間制度によって異なる90日〜330日(退職理由や年齢で変動)

このように、社会保険給付金はあくまで上位の概念であり、失業保険はそのなかの一部です。

退職前後にはこの失業保険だけでなく、傷病手当金や出産手当金など、自分の状況に合った給付金を組み合わせて活用することが大切になります。


社会保険給付金にはどんな種類がある?代表的な給付金一覧

ここからは、退職前後に活用できる主な社会保険給付金を個別に紹介していきます。

「自分はどれに当てはまるのか」をイメージしながら読み進めてみてください。

それぞれの制度の目的や対象者、支給額の目安を以下の表にまとめました。

制度名支給元対象となる状況支給額の目安最大支給期間
傷病手当金健康保険病気・ケガで働けない給与の約2/3通算1年6か月
失業手当(基本手当)雇用保険離職して求職活動中給与の50〜80%90〜330日
出産手当金健康保険出産のため休業給与の約2/3産前42日+産後56日
育児休業給付金雇用保険育休を取得して休業給与の67%→50%最長2歳まで
介護休業給付金雇用保険家族の介護で休業給与の67%通算93日

それぞれの内容をもう少し詳しく見ていきましょう。

傷病手当金 ― 病気やケガで働けないときの生活保障

傷病手当金は、業務外の病気やケガで仕事を休み、十分な給与が受けられないときに健康保険から支給される手当です。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式サイトでは、傷病手当金の趣旨について次のように説明されています。

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。 ――全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき

支給額は、直近12か月間の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2に相当する金額が1日あたりの支給額になります。

たとえば月給30万円の方であれば、1日あたり約6,667円、1か月あたり約20万円が受け取れる計算です。

支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6か月となっています。

ここで注意したいのは、うつ病や適応障害などの精神的な疾患も対象に含まれるという点です。

身体のケガだけでなく、心の不調で働けなくなった場合にも申請できることは、知らない方が意外と多いポイントです。

失業手当(基本手当) ― 離職後の就職活動中に受け取れるお金

失業手当は、正式には雇用保険の「基本手当」と呼ばれる制度です。

退職後にハローワークで求職の申し込みをして、失業状態にあると認定されることで受給できます。

支給額は、退職前6か月の賃金をもとに算出される「賃金日額」に50〜80%の給付率をかけた「基本手当日額」で決まります。

年齢によって上限額が設定されており、2025年8月以降の上限額は次の通りです。

  • 29歳以下…基本手当日額の上限 7,255円
  • 30〜44歳…上限 8,060円
  • 45〜59歳…上限 8,870円
  • 60〜64歳…上限 7,294円

2025年4月の法改正により、自己都合退職の場合の給付制限期間がこれまでの2か月から1か月に短縮されました。

これにより、退職してからおよそ1か月半ほどで初回の支給を受けられるようになっています。

また、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講した場合は給付制限自体が解除される特例もあるため、退職後にスキルアップを目指す方にはさらに有利な仕組みになっています。

2025年4月からは、この給付制限期間が1か月に短縮されます。この変更により、離職してから約1か月半程度で給付を受けることが可能になります。 ――厚生労働省「自己都合離職者の給付制限の見直し

出産手当金・育児休業給付金 ― 出産と子育て期間をカバーする制度

出産手当金は、健康保険に加入している方が出産のために仕事を休んだ際に支給されます。

支給対象期間は出産予定日の42日前(多胎妊娠は98日前)から出産日の翌日以降56日目までです。

支給額の計算方法は傷病手当金と同じで、標準報酬月額の平均額を30で割った金額の3分の2が1日あたりの支給額となります。

一方、育児休業給付金は雇用保険から支給される制度で、育休を取得した方が対象になります。

育児休業給付金の支給額は次のように段階的に変わります。

  • 育休開始から180日目まで…休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
  • 181日目以降…休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

支給対象期間は原則として子どもが1歳になるまでですが、保育園に入れないなど一定の事情がある場合には最長で2歳まで延長されます。

出産手当金と育児休業給付金は支給元が異なるため、要件を満たせば両方を受け取ることが可能です。

妊娠・出産を控えた方は、どちらも忘れずに申請するようにしましょう。

介護休業給付金 ― 家族の介護で仕事を休む方への支援

介護休業給付金は、家族の介護のために仕事を一定期間休んだ方に、雇用保険から支給される給付金です。

対象となる家族の範囲は、配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫とされています。

支給要件と概要をまとめると、以下のようになります。

  • 介護休業を開始した日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あること
  • 対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分割して取得可能
  • 支給額は休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%

介護はいつ必要になるかわかりません。

「自分にはまだ関係ない」と思っている方でも、制度の存在だけは知っておくと安心です。

そのほか知っておきたい給付金(高額療養費・障害年金・遺族年金)

上記のほかにも、退職前後の生活を支えてくれる社会保険の給付制度があります。

特に知っておきたいのが、高額療養費制度、障害年金、遺族年金の3つです。

制度名概要支給元
高額療養費1か月の医療費自己負担額が上限を超えた場合に超過分が払い戻される健康保険
障害年金病気やケガで一定以上の障害状態が続く場合に支給される年金国民年金・厚生年金
遺族年金被保険者が亡くなった場合に遺族に支給される年金国民年金・厚生年金

傷病手当金の受給中に症状が固定した場合は、障害年金への切り替えを検討する必要が出てきます。

厚生労働省のリーフレットでも、傷病手当金の受給者に対して障害年金への移行について案内が行われています。

障害年金は、国民年金から支給される障害基礎年金、厚生年金保険から支給される障害厚生年金の2種類があります。 ――厚生労働省「傷病手当金を受給されている皆様・病気やけがで療養中の皆様へ

これらの制度は状況に応じて組み合わせることもできるため、自分に当てはまりそうなものがないか確認しておきましょう。


社会保険給付金をもらうための4つの条件

社会保険給付金は「申請すれば誰でももらえる」というわけではありません。

制度ごとに決められた受給条件を満たす必要があります。

ここでは、代表的な給付金に共通する4つの条件を整理します。

事前に確認しておくことで、申請後に「条件を満たしていなかった…」という事態を防げます。

社会保険または雇用保険に一定期間加入していること

どの給付金にも共通しているのが、一定の保険加入期間が必要になるという点です。

具体的な期間は制度によって異なります。

  • 傷病手当金の退職後の継続受給…退職日までに健康保険の加入期間が継続して1年以上
  • 失業手当(自己都合退職の場合)…離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上
  • 失業手当(会社都合退職の場合)…離職日以前の1年間に被保険者期間が通算6か月以上
  • 育児休業給付金…育休開始日前2年間に被保険者期間が12か月以上

加入期間が足りないと受給資格そのものが認められないため、退職を検討し始めたら早めに自分の加入歴を確認することをおすすめします。

勤務先の人事担当や、加入している健康保険組合、ハローワークに問い合わせれば教えてもらえます。

退職後に次の就職先が決まっていないこと(失業手当の場合)

失業手当を受け取るには、「失業の状態」にあることが条件になります。

失業の状態とは、次の条件をすべて満たしていることを指します。

  • 就職する意思と能力があること
  • 積極的に求職活動をしていること
  • 現在、職業に就いていないこと

すでに転職先が決まっている場合は「失業状態」とみなされないため、失業手当の対象にはなりません。

退職後すぐに次の仕事が始まる方は、代わりに再就職手当の受給を検討してみましょう。

医師の診断書など客観的な証明があること(傷病手当金の場合)

傷病手当金は「働けない状態」であることが支給の前提です。

そして、自己申告だけでは不十分で、主治医が記入した傷病手当金支給申請書の「療養担当者記入欄」による証明が必要になります。

この欄には、傷病名・療養の状態・労務不能と認めた期間などを医師が記載します。

加えて、勤務先の事業主にも「休業期間中の勤務状況や給与の支払い状況」を証明してもらう必要があります。

つまり、傷病手当金の申請には次の三者の記入が求められます。

  • 被保険者本人(申請者情報・振込先口座など)
  • 事業主(勤務状況・賃金の支払い状況の証明)
  • 療養担当者(主治医による労務不能の証明)

いずれかの記入が欠けると書類不備となり、支給が遅れる原因になりますので注意が必要です。

定められた期限内に申請手続きを行うこと

社会保険給付金には、それぞれ申請の時効(請求権の消滅時効)が設定されています。

期限を過ぎてしまうと、本来受け取れるはずだったお金を失ってしまいます。

給付金の種類申請期限の目安
傷病手当金労務不能であった日ごとにその翌日から2年
失業手当(基本手当)離職日の翌日から原則1年以内に受給を完了
出産手当金出産日(予定日)の翌日から2年
高額療養費診療を受けた月の翌月1日から2年

特に失業手当は、受給期間(原則1年)の中で所定給付日数分を消化しなければなりません。

退職してからのんびり構えていると、もらえる日数が残っているのに受給期間が切れてしまうケースもあるのです。

退職が決まったら、できるだけ速やかにハローワークへ足を運ぶことが重要です。


社会保険給付金を活用するメリットと知っておくべきデメリット

制度を正しく活用すれば退職後の不安を大きく減らすことができますが、一方で注意点もあります。

メリットとデメリットの両面を把握して、自分にとってベストな選択をしましょう。

メリット① 退職後の生活資金を確保して安心して次のステップへ進める

退職後に収入が途切れる不安は、多くの方に共通する悩みです。

社会保険給付金を活用すれば、一定期間の生活費をカバーしながら転職活動や療養に専念できます。

たとえば、月給30万円の方が傷病手当金を受給した場合の月額は約20万円です。

さらにその後、失業手当を受け取る流れを組めば、合計で相当な金額になります。

  • 傷病手当金(月約20万円 × 最大18か月)…約360万円
  • 失業手当(月約15万円 × 約3〜5か月)…約45〜75万円

これだけのお金が、すべて公的制度から支払われるものだと考えると、活用しない手はありません。

メリット② 傷病手当金は非課税なので手取りが多くなる

傷病手当金は所得税・住民税の課税対象外です。

そのため、受給額がそのまま手元に残るという大きなメリットがあります。

通常、給与を受け取る場合は所得税や住民税が差し引かれますが、傷病手当金にはそれがありません。

実質的に手取りベースで考えると、給与の2/3よりも体感的に大きな金額に感じられることが多いでしょう。

なお、失業手当(基本手当)も同様に非課税として扱われます。

雇用保険(基本手当)の給付は全て非課税です。 ――厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)〜

メリット③ 受給中に国民年金の免除申請ができる場合がある

退職後は厚生年金から国民年金に切り替わりますが、収入がない状態で毎月の年金保険料を支払うのは大きな負担です。

失業中であることを理由に国民年金の保険料免除を申請できる場合があります。

免除を受けるためには、離職票や雇用保険受給資格者証を市区町村の窓口に持参して手続きを行います。

免除が認められた期間も年金の受給資格期間にカウントされるため、将来の年金額への影響を最小限に抑えることが可能です。

社会保険給付金の受給と合わせて検討しておくと、退職後の家計をさらに安定させることができます。

デメリット① 申請手続きが煩雑で書類不備による遅れが起きやすい

社会保険給付金を受け取るうえで最も多い失敗が、申請手続きのつまずきです。

傷病手当金であれば本人・事業主・医師の三者の記入が必要であり、失業手当でも離職票の取得からハローワークでの手続きまで複数のステップがあります。

書類に不備があると差し戻しとなり、支給開始が数週間〜1か月以上遅れることも珍しくありません。

特に注意したいポイントは次の通りです。

  • 離職票の記載内容と実態が異なる場合、確認に時間がかかる
  • 傷病手当金の申請書で医師の記入漏れがあると再提出が必要になる
  • 申請書の振込先口座の記載ミスで振り込みが遅延する

書類は提出前に必ず全項目をダブルチェックする習慣をつけましょう。

デメリット② 傷病手当金と失業手当を同時に受け取ることはできない

傷病手当金は「働けない状態」に支給され、失業手当は「働ける状態で求職活動をしている人」に支給されます。

この2つは真逆の条件のため、制度上、同時に受給することはできません。

「できるだけ多くの給付金をもらいたい」と思っても、両方を一度に受け取ることはルール違反になります。

ただし、「先に傷病手当金を受給し、回復後に失業手当へ切り替える」という順番を踏めば、それぞれを時期をずらして受け取ることは可能です。

この合わせ技については、後の章で詳しく解説します。

デメリット③ 受給中にアルバイトをすると減額・停止のおそれがある

失業手当の受給中にアルバイトをすること自体は禁止されていませんが、一定のルールがあります。

申告せずに働いた場合は不正受給と判断され、受給額の3倍返還という厳しいペナルティが科されるおそれがあるため注意が必要です。

失業手当の受給中にアルバイトをする場合の注意事項は、おもに次の通りです。

  • 1週間の労働時間が20時間以上になると「就職」とみなされ、受給資格を失う可能性がある
  • 働いた日は「失業の日」に該当しないため、その分だけ支給が先送りまたは減額される
  • どんなに短時間・少額の収入であっても、ハローワークへの申告は必須

傷病手当金の受給中についても、就労は原則として認められていません。

わずかなアルバイト収入のために給付金全体を失ってしまうリスクがあるため、慎重に判断しましょう。


社会保険給付金の申請手順をステップごとに解説

「制度のことはわかったけど、実際にどう動けばいいの?」

ここでは、退職前後の社会保険給付金を受け取るまでの流れを4つのステップに分けて説明します。

初めての方でも迷わないよう、ステップごとに「何をすればいいか」を具体的にまとめました。

ステップ1|退職前に自分がもらえる給付金を確認する

退職を考え始めたら、まずは自分がどの給付金の対象になるかを確認しましょう。

確認の際に見ておくべきポイントは次の通りです。

  • 健康保険の加入期間は通算で何年あるか
  • 雇用保険の加入期間は離職日前2年間で12か月以上あるか
  • 現在、通院中の疾患はあるか(傷病手当金の対象になるか)
  • 退職理由は自己都合か会社都合か

退職後に「もらい損ねた」と後悔しないためには、退職届を出す前のこのタイミングが最も重要です。

会社の人事部に聞きにくいことは、ハローワークや加入している健康保険組合に直接問い合わせれば丁寧に教えてもらえます。

ステップ2|必要書類をそろえる(離職票・申請書・診断書など)

受け取りたい給付金が決まったら、次は申請に必要な書類を準備します。

代表的な給付金で必要となる書類を整理すると、以下のようになります。

給付金の種類必要な書類
傷病手当金傷病手当金支給申請書(本人・事業主・医師の記入)、本人確認書類
失業手当離職票(1・2)、雇用保険被保険者証、マイナンバー確認書類、本人確認書類、写真2枚、印鑑、通帳
出産手当金出産手当金支給申請書、医師または助産師の証明

離職票は退職後に会社が発行するもので、届くまでに10日〜2週間程度かかるのが一般的です。

届かない場合は会社に催促するか、ハローワークに相談しましょう。

ステップ3|申請先に書類を提出する(ハローワーク・健康保険組合)

書類がそろったら、該当する窓口に提出します。

申請先は制度によって異なりますので、間違えないようにしましょう。

  • 傷病手当金 → 加入している健康保険組合または協会けんぽ(全国健康保険協会)の各支部
  • 失業手当 → 住所地を管轄するハローワーク
  • 出産手当金 → 加入している健康保険組合または協会けんぽの各支部
  • 育児休業給付金 → 事業主を経由してハローワークへ提出

失業手当の場合は、書類を提出するだけでなく、ハローワークで求職の申し込みを行い、職員との面談を受ける必要があります。

初回の訪問時に受給資格の決定が行われ、その後4週間ごとに失業の認定を受ける流れになります。

ステップ4|審査完了後に指定口座へ振り込まれる

書類が受理されると審査が始まり、問題がなければ指定した銀行口座に給付金が振り込まれます。

審査にかかる期間は制度や申請先によって異なりますが、おおよその目安は次の通りです。

  • 傷病手当金…申請書提出後おおむね2週間〜1か月程度
  • 失業手当…受給資格決定から初回振り込みまで約5〜6週間(会社都合の場合)
  • 出産手当金…申請後おおむね2週間〜2か月程度

審査中に不備が見つかると差し戻しになるため、振り込みがさらに遅れることもあります。

申請後も、健康保険組合やハローワークからの連絡をこまめに確認することが大切です。


傷病手当金と失業手当の合わせ技で最大28か月分を受け取る方法

社会保険給付金の中でも、傷病手当金と失業手当を組み合わせて受給する方法は、退職前後のお金を最大限に活用するうえで非常に重要なテクニックです。

うまく手順を踏めば、最大で約28か月分の給付を受け取れる可能性があります。

この仕組みを知っているかどうかで、数百万円単位の差が生まれることもあるのです。

受給期間延長の手続きをしないと失業手当をもらい損ねる

通常、失業手当の受給期間は離職日の翌日から1年間です。

しかし、傷病手当金を受給している間は働けない状態にあるため、そのままでは失業手当の受給期間が過ぎてしまいます。

ここで必要になるのが、「受給期間延長」の手続きです。

延長手続きの概要は以下の通りです。

  • 病気やケガで30日以上働けない状態が続いた場合に申請できる
  • 延長できる期間は最長3年間(通常の1年と合わせて最大4年)
  • 退職後に傷病手当金を受給する方は早めにハローワークへ申請する

病気やケガ、妊娠・出産・育児、親族の介護など、やむを得ない理由で仕事に就くことができない期間がある場合、この受給期間を延長できる制度があります。 ――厚生労働省「受給期間延長の申請期限変更について

この手続きを忘れると、傷病手当金の受給が終わった後に失業手当を受け取ろうとしても、受給期間が切れていて1円ももらえないという最悪のケースになりかねません。

まず傷病手当金 → 回復後に失業手当という流れが基本

最大28か月分の受給を実現するための流れは、次のステップになります。

順序やること受給できる期間
在職中に傷病手当金の受給を開始する最長18か月(通算1年6か月)
退職後にハローワークで受給期間延長の手続きをする
傷病手当金の受給期間が終了し、働ける状態に回復する
ハローワークで求職の申し込みをして失業手当を受給する最長約10か月(自己都合150日+待期・制限期間等)

傷病手当金の18か月と、失業手当の約10か月を足すと最大約28か月分になるという計算です。

ただし、この流れを成立させるためには「在職中から傷病手当金を受給していること」「退職日に出勤していないこと」「健康保険の加入期間が1年以上あること」など、いくつかの条件を同時に満たす必要があります。

条件や手順を間違えると受給資格を失ってしまうリスクもあるため、不安な方は専門家のサポートを受けるのが確実です。


【状況別】あなたが受け取るべき社会保険給付金チェック

「結局、自分の場合は何を申請すればいいの?」

ここでは、よくある4つの退職パターンごとに、優先して検討すべき給付金を整理しました。

ケース① 心身の不調で退職を考えている方

うつ病・適応障害・パニック障害などの精神疾患や、腰痛・ヘルニアなどの身体の不調が理由で退職を考えている方は、まず傷病手当金の申請を検討しましょう。

優先順位の目安は次の通りです。

  • 最優先…傷病手当金(退職前から受給を開始する)
  • 次に検討…受給期間延長手続き(退職後にハローワークで申請)
  • 回復後…失業手当(求職活動を開始してから)

在職中に傷病手当金の受給を開始しておくことで、退職後も継続して受け取れる可能性が高まります。

退職届を出す前に必ず主治医に相談し、診断書を書いてもらえるか確認しておくことが大切です。

ケース② 自己都合で退職して転職活動をする方

体調には問題がなく、キャリアアップや環境を変えるために退職する方は、失業手当が中心となります。

2025年4月以降の自己都合退職であれば、給付制限期間は原則1か月に短縮されているため、以前よりも早くお金を受け取れるようになっています。

押さえておくべきポイントは以下の通りです。

  • 退職前に離職票の発行を会社に依頼しておく
  • 退職後はすみやかにハローワークで求職の申し込みを行う
  • 教育訓練を受講すれば給付制限が解除される特例がある
  • 早期に再就職が決まった場合は再就職手当の対象になる可能性がある

自己都合退職の場合、被保険者期間に応じて90日・120日・150日のいずれかの給付日数が適用されます。

ケース③ 会社都合(解雇・リストラ)で退職した方

倒産や整理解雇などの会社都合で退職した方は、「特定受給資格者」として手厚い保護を受けることができます。

自己都合退職と比較した主な違いは次の通りです。

比較項目会社都合退職自己都合退職
雇用保険の加入要件離職前1年間に6か月以上離職前2年間に12か月以上
給付制限なし(7日の待期期間のみ)1か月(2025年4月以降)
給付日数90〜330日90〜150日

会社都合の場合は給付制限がなく、7日間の待期期間が終われば速やかに受給が始まります。

また、給付日数も年齢や勤続年数によって最大330日まで延びるため、自己都合の方と比べてかなり多くのお金を受け取れる可能性があります。

ケース④ 定年退職(60歳・65歳)を迎える方

定年退職の場合でも、雇用保険の加入要件を満たしていれば失業手当の対象になります。

ただし、65歳以上で退職した場合は「高年齢求職者給付金」という別の制度が適用され、一時金として基本手当の30日分または50日分が支給される形に変わります。

定年退職者が検討すべき給付金や制度は、おもに次の通りです。

  • 失業手当(65歳未満で退職した場合)
  • 高年齢求職者給付金(65歳以上で退職した場合)
  • 老齢年金(受給開始時期の繰り上げ・繰り下げを検討)
  • 高額療養費制度(医療費が高額になった場合)

年金と失業手当の関係は複雑で、同時に受け取れないケースもあるため、事前にハローワークと年金事務所の両方に相談しておくことをおすすめします。


社会保険給付金で失敗しないために ― よくある疑問Q&A

最後に、社会保険給付金に関して多く寄せられる質問に回答していきます。

「申請してみたいけど、ちょっと不安がある」という方は、ここで疑問を解消しておきましょう。

Q. 社会保険給付金は怪しい制度ではないの?

社会保険給付金は、法律に基づいた正当な公的制度です。

怪しいものでも、裏技でもありません。

健康保険法や雇用保険法などの法律に明記されており、管轄は厚生労働省です。

「社会保険給付金」という言葉自体が正式な法律用語ではないため、インターネット上では「怪しいのでは?」と不安に感じる方もいるようです。

しかし実態は次の通りです。

  • 傷病手当金は健康保険法第99条に定められた制度
  • 失業手当(基本手当)は雇用保険法に基づく制度
  • いずれも国が運営する公的な社会保障の一部

毎月の給与から天引きされている社会保険料を財源として支給されるため、受給条件を満たしているなら遠慮なく活用すべき制度です。

Q. パートやアルバイトでも申請できる?

結論として、パートやアルバイトの方でも社会保険に加入していれば申請可能です。

傷病手当金は健康保険の被保険者であることが条件なので、勤務先の健康保険に加入しているパート・アルバイトの方は対象になります。

健康保険の被保険者であれば、パートやアルバイトも対象となります。 ――三菱UFJ銀行「傷病手当金とは?

失業手当については、雇用保険に加入していることが条件です。

2025年時点では週20時間以上の勤務で雇用保険への加入義務が生じるため、週20時間以上働いているパート・アルバイトの方であれば受給対象となる可能性があります。

なお、2028年10月からは加入要件が「週10時間以上」に引き下げられる予定で、今後はさらに対象者が広がる見込みです。

Q. 退職後に扶養に入ると受給できなくなる?

配偶者の社会保険の扶養に入ること自体は可能ですが、失業手当の基本手当日額によっては扶養に入れない場合があります。

一般的に、基本手当日額が3,612円以上の場合は年収130万円以上の見込みとなるため、社会保険上の扶養要件を満たさなくなります。

ただし、給付制限期間中は収入がないため、その間だけ一時的に扶養に入るという方法も考えられます。

判断のポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 基本手当日額が3,612円未満 → 失業手当を受けながら扶養に入れる可能性がある
  • 基本手当日額が3,612円以上 → 受給中は扶養に入れない(国民健康保険と国民年金に加入が必要)
  • 給付制限期間中 → 収入がないため扶養に入ることが可能な場合がある

健康保険組合によって判断基準が微妙に異なることもあるため、必ず加入先に確認するようにしましょう。

Q. 申請を自分でやるのが不安な場合はどうすればいい?

社会保険給付金の申請は自分で行うのが基本ですが、手続きが複雑で不安を感じる方は専門家のサポートを受けるのも一つの方法です。

サポートを受ける方法としては、おもに次のような選択肢があります。

  • ハローワークの相談窓口を利用する(無料)
  • 加入している健康保険組合に電話で相談する(無料)
  • 社会保険労務士に依頼する(有料の場合が多い)
  • 退職・給付金サポートサービスを利用する

特に傷病手当金と失業手当の組み合わせ受給を目指す方は、手順やタイミングを間違えると受給資格を失うリスクがあります。

自分だけでは判断が難しいと感じた場合は、退職前の段階で専門家に相談しておくと安心です。

「自分がいくらもらえるのか知りたい」「手続きに不安がある」という方は、まずは無料の受給診断から始めてみてください。 👉 退職時の給付金を無料診断する


退職前後は、人生の大きな転換点です。

社会保険給付金の制度を正しく知って、必要な手続きを着実に進めていけば、お金の不安を減らしながら次のステップに進むことができます。

この記事が、あなたの新しいスタートを支える一助になれば幸いです。