傷病手当金の金額はいくら?早見表で自分の受給額をすぐに確認しよう
病気やケガで会社を休まなければならなくなったとき、真っ先に気になるのが「収入がどれくらい減るのか」ではないでしょうか。
健康保険に加入している会社員であれば、一定の条件を満たすことで「傷病手当金」という給付を受け取ることができます。
とはいえ、実際にいくらもらえるのかがわからないと、生活設計を立てるのは難しいものです。
この記事では、傷病手当金の金額を早見表で一目で確認できるようにまとめました。
計算方法や支給額が減るケース、退職後の継続受給まで、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説していきます。
「休職中のお金の不安を少しでも減らしたい」という方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
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傷病手当金の金額は月給のおよそ3分の2|早見表でわかるあなたの支給額
傷病手当金の金額は、ざっくり言えば「月給のおよそ3分の2(約67%)」が目安です。
ただし正確な金額は「標準報酬月額」という仕組みをもとに計算されるため、手取り額とは少し異なります。
ここではまず制度の基本から押さえたうえで、早見表を使って自分の受給額を確認してみましょう。
傷病手当金を理解するうえで大切なポイントは、次の3つです。
- 健康保険に加入している会社員・公務員が対象であること
- 支給額は「標準報酬月額」をもとに自動的に決まること
- 受給期間は通算して最長1年6か月であること
これらを踏まえたうえで、順番に詳しく見ていきましょう。
そもそも傷病手当金とは?制度のしくみをやさしく解説
傷病手当金とは、業務外の病気やケガで働けなくなった会社員に対して、健康保険から支給される生活保障の制度です。
会社での仕事中や通勤途中のケガは労災保険の対象になりますが、プライベートでの病気やケガは傷病手当金の対象になります。
この点は混同しやすいので注意してください。
傷病手当金を受け取るためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができない状態であること
- 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること(最初の3日間は「待期期間」と呼ばれます)
- 休業した期間に対して給与の支払いがないこと
被保険者が病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。 ――全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金について」
なお、支給期間は2022年1月の法改正により「支給開始日から通算して1年6か月」に変更されました。
以前は暦日で1年6か月でしたが、途中で出勤した日は期間にカウントされなくなったため、断続的に休む方にとっては有利な改正といえます。
国民健康保険の加入者(自営業・フリーランスなど)は原則として傷病手当金の対象外なので、自分が加入している保険の種類を確認しておきましょう。
傷病手当金の金額を決める「標準報酬月額」とは
傷病手当金の支給額を計算するうえで最も重要なのが「標準報酬月額」です。
標準報酬月額とは、毎月の給与(基本給+各種手当+残業代など)を一定の等級に区分けした金額のことを指します。
健康保険料や厚生年金保険料もこの標準報酬月額をもとに算出されているため、給与明細の控除欄を見ると間接的に確認することが可能です。
標準報酬月額を決定するおもなタイミングは以下の通りです。
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 資格取得時決定 | 入社時の給与をもとに決定される |
| 定時決定(算定基礎届) | 毎年4〜6月の給与の平均で決定し、9月から適用される |
| 随時改定(月額変更届) | 給与に大幅な変動があったとき(固定的賃金が2等級以上変動)に改定される |
たとえば月給が25万円の方であれば、標準報酬月額は「26万円」の等級に該当します。
等級の区分は1等級(5万8千円)から50等級(139万円)まで全50段階あり、自分の等級は会社の人事部門や健康保険組合に問い合わせると正確にわかります。
報酬月額に基づき、健康保険は50等級、厚生年金保険は32等級に区分されています。 ――日本年金機構「標準報酬月額・標準賞与額」
なお、傷病手当金の計算では「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額の平均」が使われます。
直近1か月だけの給与ではなく12か月の平均が使われるため、残業代が多かった月・少なかった月がある方も平均化されて計算される点を覚えておきましょう。
【早見表】給与別・傷病手当金の日額と月額の一覧
実際に自分がいくらもらえるのか、以下の早見表で確認してみてください。
傷病手当金の支給日額は「標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3」で計算されます。
月額の目安は支給日額に30日を掛けた金額ですが、実際の支給は「休んだ日数分」で計算されるため、あくまで参考値として捉えてください。
| 標準報酬月額 | 支給日額(概算) | 月額の目安(概算) |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,447円 | 約133,400円 |
| 22万円 | 約4,890円 | 約146,700円 |
| 24万円 | 約5,334円 | 約160,000円 |
| 26万円 | 約5,780円 | 約173,400円 |
| 28万円 | 約6,223円 | 約186,700円 |
| 30万円 | 約6,667円 | 約200,000円 |
| 34万円 | 約7,557円 | 約226,700円 |
| 38万円 | 約8,447円 | 約253,400円 |
| 41万円 | 約9,114円 | 約273,400円 |
| 47万円 | 約10,447円 | 約313,400円 |
| 50万円 | 約11,114円 | 約333,400円 |
この表を見ると、月給が30万円程度の方であれば、傷病手当金として月に約20万円を受け取れる計算になります。
手取りの約3分の2とはいえ、住宅ローンや家賃の支払いがある方にとっては心もとない金額かもしれません。
早見表はあくまで概算であり、実際の支給日額は1円単位で異なります。
正確な金額を知りたい場合は、加入先の健康保険組合や協会けんぽに直接確認するのが確実です。
傷病手当金の金額はどう計算する?早見表の根拠となる算出ステップ
早見表でおおよその金額がわかったところで、次は実際の計算方法を見ていきましょう。
計算のステップを理解しておくと、自分の金額をより正確に把握できるだけでなく、会社や健保組合の担当者とのやり取りもスムーズになります。
傷病手当金の計算で押さえておくべきポイントは次の2つです。
- 基本の計算式は「標準報酬月額の12か月平均 ÷ 30 × 2/3」
- 健康保険の加入期間が12か月に満たない場合は別の計算ルールが適用される
それぞれ具体的に見ていきましょう。
基本の計算式と具体例で理解する支給日額の出し方
傷病手当金の1日あたりの支給額(支給日額)は、以下の計算式で求めます。
支給日額 = 支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3
たとえば、月給28万円(標準報酬月額28万円)の会社員Aさんが病気で30日間休業したケースで考えてみましょう。
計算の流れは次のようになります。
- 直近12か月の標準報酬月額の平均を求める → 28万円(毎月同じ等級と仮定)
- 平均額を30で割る → 280,000円 ÷ 30 = 9,333円(1円未満の端数は四捨五入ではなく切り捨てではなく、小数点第1位を四捨五入)
- 上記に2/3を掛ける → 9,333円 × 2/3 = 6,222円(1円未満の端数は切り捨て)
- 支給日額6,222円 × 休業日数30日 = 186,660円が支給される
ここで注意したいのは、最初の3日間は「待期期間」として支給対象外になるという点です。
Aさんが連続して30日間休んだ場合、実際に支給されるのは27日分(30日 − 3日)になります。
そのため、実際の受取額は 6,222円 × 27日 = 167,994円 となります。
傷病手当金は、1日あたりの支給額は「支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額」÷30日×(2/3)です。 ――全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金について」
待期期間の3日間は有給休暇を使っても、土日祝日であってもカウントされます。
連続3日間の休みが成立していれば、4日目から傷病手当金が支給される仕組みです。
健康保険の加入期間が1年に届かない場合の計算ルール
転職して間もない方や、入社してまだ12か月経っていない方は、直近12か月分の標準報酬月額を平均することができません。
その場合は、以下の2つの金額を比較して、いずれか低いほうを使って計算します。
| 比較する金額 | 内容 |
|---|---|
| 実際の加入期間の標準報酬月額の平均 | 加入している月数分だけの平均を求める |
| 前年度9月30日時点の全被保険者の標準報酬月額の平均 | 加入する健保組合や協会けんぽが定めた金額(協会けんぽの場合は30万円が目安) |
たとえば入社3か月目で休業に入り、その3か月間の標準報酬月額が20万円だった場合を考えます。
全被保険者の平均が30万円であれば、低いほうの20万円が計算に使われることになります。
逆に、入社して間もないけれど高給の方は、全被保険者の平均額が上限になるため、計算上の金額が下がる可能性があります。
自分がどちらに該当するかは、加入先の健康保険組合に確認するのが最も正確です。
入社直後に体調を崩す可能性はゼロではありませんので、転職の際はこうしたセーフティネットの仕組みも頭に入れておくと安心です。
傷病手当金の金額が減ったり止まったりするケース一覧
傷病手当金は必ずしも満額がもらえるわけではありません。
他の収入や給付と重複する場合には、金額が調整(減額)されたり、支給が一時的に止まったりすることがあります。
調整が発生するおもなケースを一覧にまとめました。
| ケース | 調整内容 |
|---|---|
| 休業中に会社から給与が出ている | 給与が傷病手当金より少ない場合は差額のみ支給 |
| 障害厚生年金・障害手当金を受給中 | 年金日額が傷病手当金日額を下回る場合は差額を支給 |
| 労災保険の休業補償給付を受給中 | 労災給付が優先され傷病手当金は不支給 |
| 出産手当金と重複する場合 | 出産手当金が優先され差額があれば傷病手当金を支給 |
| 退職後に老齢年金を受給中 | 年金日額が上回る場合は傷病手当金は不支給 |
それぞれ具体的にどのような仕組みで調整されるのか、詳しく見ていきましょう。
休業中に会社から給与が支払われているとき
傷病手当金の受給条件のひとつに「休業した期間に対して給与の支払いがないこと」があります。
ただし、会社から給与が支払われていても、その金額が傷病手当金の日額より少なければ、差額分が傷病手当金として支給されます。
たとえば、傷病手当金の日額が6,000円で、会社から日額3,000円の給与が支払われているケースでは、差額の3,000円が傷病手当金として受け取れます。
実務的にありがちなパターンとしては、以下のようなものがあります。
- 休職中でも基本給の一部が支払われる会社の規定がある場合
- 有給休暇を使って給与が出ている期間
- ボーナス(賞与)が休職中に支給された場合(賞与は調整対象外)
有給休暇を使っている間は満額の給与が支払われるため、その期間は傷病手当金が支給されないことになります。
有給休暇を使い切ってから傷病手当金の申請に切り替える方が多いですが、どちらを先に使うかは会社の就業規則や個人の判断によるところが大きいです。
不安な場合は、会社の人事担当者や健保組合に相談してみてください。
障害厚生年金や障害手当金を受けているとき
同じ傷病で障害厚生年金の受給権がある場合、傷病手当金との間で調整が行われます。
具体的には、障害厚生年金の日額(年額 ÷ 360)が傷病手当金の日額以上であれば、傷病手当金は支給されません。
障害厚生年金の日額のほうが低い場合にのみ、その差額が傷病手当金として支給されます。
調整の計算イメージは以下のとおりです。
- 傷病手当金の日額が6,000円、障害厚生年金の日額が4,500円の場合 → 差額の1,500円が支給される
- 傷病手当金の日額が6,000円、障害厚生年金の日額が7,000円の場合 → 傷病手当金は不支給
また、障害手当金(一時金)を受けた場合は、傷病手当金の合計額が障害手当金の金額に達するまでは傷病手当金が支給停止になります。
障害手当金の金額に達した後は、通常どおり傷病手当金の支給が再開されます。
障害年金の手続きと傷病手当金の手続きは別々に行う必要があるため、両方の受給資格がある方は手続きの漏れがないよう注意しましょう。
労災保険の休業補償給付を受けているとき
業務上の事由や通勤によるケガ・病気で労災保険の休業補償給付を受けている場合、傷病手当金は支給されません。
これは、労災保険と健康保険の給付が同じ目的(休業中の所得保障)を持っているためです。
労災保険の休業補償給付は「給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)」が支給されます。
傷病手当金の支給率が約67%であるのに対し、労災保険は80%と手厚くなっています。
ただし注意が必要なのは、以下のような複合的なケースです。
- 業務上のケガで休業中に、まったく別のプライベートの病気が発生した場合
- 労災の休業補償給付の日額が傷病手当金の日額を下回る場合
このような場合には、傷病手当金の差額支給が認められる可能性があります。
労災保険と健康保険の両方にまたがるケースは判断が複雑になるため、加入先の健保組合や労働基準監督署に相談することをおすすめします。
出産手当金と同時に受給資格がある場合
出産手当金と傷病手当金の両方の受給条件を満たしている場合は、出産手当金が優先して支給されます。
出産手当金の日額も「標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3」で計算されるため、通常は傷病手当金と同額になります。
そのため多くのケースでは、出産手当金が支給されている期間中は傷病手当金がまるごと支給停止になると考えてよいでしょう。
ただし例外として、傷病手当金の日額のほうが出産手当金の日額よりも高い場合があります。
- 出産手当金の算定基礎となる標準報酬月額と、傷病手当金の算定基礎となる標準報酬月額が異なるケース
- 上記のケースで傷病手当金の日額が上回る場合は差額が支給される
妊娠中の切迫早産などで傷病手当金を受給し、そのまま産前休業に入るような場合はこの調整に該当しやすくなります。
出産手当金の対象期間(出産日以前42日〜出産日後56日)が終了すれば、傷病手当金の支給は自動的に再開されますので、期間の管理をしっかりしておきましょう。
退職後に老齢年金を受給している場合
退職後に傷病手当金を継続受給している方が老齢厚生年金や老齢基礎年金を受け取っている場合も、調整の対象になります。
老齢年金の日額(年額 ÷ 360)が傷病手当金の日額以上であれば、傷病手当金は支給停止になります。
差額がある場合にのみ、その差額が傷病手当金として支給される仕組みです。
具体的な判断基準は以下のとおりです。
| 条件 | 結果 |
|---|---|
| 老齢年金の日額 ≧ 傷病手当金の日額 | 傷病手当金は全額不支給 |
| 老齢年金の日額 < 傷病手当金の日額 | 差額が傷病手当金として支給される |
60歳以上で定年退職後に病気療養を続けている方などが該当しやすいケースです。
この調整は在職中には適用されず、退職後の継続受給時にのみ適用される点がポイントになります。
年金の受給開始時期と傷病手当金の受給時期が重なりそうな場合は、事前に年金事務所と健保組合の両方に相談しておくと安心です。
傷病手当金を受け取っている間も払い続ける費用に要注意
傷病手当金を受給できるとわかっても、安心するのはまだ早いかもしれません。
休職中であっても支払い義務が続く費用があり、手元に残る金額は想像より少なくなることがあります。
事前に把握しておきたい費用は、大きく分けて2つあります。
- 社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は休職中も発生する
- 傷病手当金は非課税だが、住民税の支払いは続く
それぞれの仕組みと注意点を確認していきましょう。
健康保険料・厚生年金保険料は休職中も発生する
休職中であっても、会社に在籍している限り健康保険料と厚生年金保険料の支払い義務は消えません。
育児休業中は社会保険料の免除制度がありますが、傷病手当金を受給している休職中には、残念ながらそのような免除制度は存在しません。
保険料は休職前の標準報酬月額をもとに計算されるため、金額も休職前と変わらないのが原則です。
具体的な保険料の負担割合は次のとおりです。
| 項目 | 本人負担 | 会社負担 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 標準報酬月額の約5%(協会けんぽの場合) | 同額 |
| 厚生年金保険料 | 標準報酬月額の9.15% | 同額 |
たとえば標準報酬月額が30万円の方であれば、毎月の社会保険料の本人負担は約42,000円〜45,000円程度になります。
傷病手当金の月額が約20万円のところから約4万円以上が差し引かれるイメージです。
支払い方法は会社によって異なり、毎月の口座振替で会社に支払うケースや、復職後にまとめて精算するケースなどがあります。
休職前に会社の人事担当者と支払い方法をしっかり確認しておくことが大切です。
傷病手当金は非課税だが住民税の請求は残る
傷病手当金は所得税法上の非課税所得に該当するため、所得税は一切かかりません。
確定申告の際にも傷病手当金を収入として申告する必要はありません。
しかし、住民税については注意が必要です。
住民税は「前年の所得」に基づいて計算され、翌年の6月から翌々年の5月にかけて分割で支払う仕組みになっています。
つまり、休職中に届く住民税の請求は「働いていた前年の収入」に対するものです。
休職中の住民税で覚えておきたいポイントは以下のとおりです。
- 休職中の傷病手当金には住民税はかからないが、前年分の住民税の支払いは続く
- 在職中は給与天引き(特別徴収)だったものが、休職中は普通徴収(自分で納付)に切り替わることがある
- 納付が難しい場合は自治体の窓口で分割納付や猶予の相談ができる
納税者が病気にかかり又は負傷した場合(中略)市町村は、その徴収を猶予することができる。 ――総務省「地方税法 第15条(徴収の猶予)」
収入が大幅に減っている休職中に前年並みの住民税を請求されると、家計への負担は小さくありません。
支払いが厳しいと感じたら、早めにお住まいの市区町村の税務課に相談してみてください。
傷病手当金の金額は退職後も早見表の水準でもらえる?継続受給の条件
退職を考えている方や、やむを得ず退職することになった方が気になるのが「退職後も傷病手当金はもらえるのか」という問題です。
結論からいうと、一定の条件を満たせば退職後も傷病手当金を継続して受け取ることが可能です。
退職後に受給できる金額は、在職中と同じ計算式で算出された日額がそのまま適用されます。
つまり、早見表で確認した金額が退職後も同水準で支給されるということです。
ただし、退職後の受給にはいくつかの条件と注意点があるため、詳しく確認していきましょう。
退職後も傷病手当金を受け取れる3つの要件
退職後に傷病手当金を継続して受給するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 退職日までに継続して1年以上、健康保険の被保険者であったこと
- 退職時に傷病手当金を受給中であること、または受給要件を満たしていること
- 退職日に出勤していないこと(退職日に労務に服していないこと)
資格喪失の日の前日(退職日)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金の支給を受けているか、受けられる状態にあること。 ――全国健康保険協会(協会けんぽ)「退職後の傷病手当金について」
特に見落としやすいのが3つ目の「退職日に出勤していないこと」という条件です。
退職日に挨拶回りのために出社し、少しでも業務を行ってしまうと「労務に服した」とみなされ、退職後の継続受給ができなくなる可能性があります。
最終出社日と退職日の設定には十分注意してください。
また、1つ目の「継続して1年以上」という要件は、同じ健康保険の加入者として1年以上という意味です。
転職して保険者が変わった場合でも、前職と現職の間に1日も空白がなければ通算できるケースがあります。
退職後の受給で気をつけたいポイント
退職後の継続受給が認められた場合でも、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
退職後に気をつけたい点をまとめると、次のようになります。
| 注意点 | 詳細 |
|---|---|
| 一度でも就労可能と判断されると支給終了 | 退職後は「働ける状態に回復した」時点で受給資格を失い、再び悪化しても再支給されない |
| 失業保険との同時受給は不可 | ハローワークで求職活動をすると「就労可能」とみなされ傷病手当金が止まる |
| 国民健康保険に切り替えても受給は継続 | 退職後に国保に加入しても、在職中の健保からの傷病手当金は支給される |
| 受給期間は通算1年6か月の残りの範囲 | 在職中に消化した期間も含めての通算となる |
特に重要なのが、退職後は一度「労務可能」と判断されると、傷病手当金の受給権が完全に消滅するという点です。
在職中であれば体調が回復して出勤した後に再び悪化しても、通算1年6か月の範囲内で支給を受けられます。
しかし退職後は、いったん回復すると再度の支給が認められない仕組みになっています。
主治医の診断書の内容が支給の判断に直結するため、医師と十分にコミュニケーションをとることが大切です。
傷病手当金の早見表を活用する前に知っておきたいQ&A
傷病手当金について調べていると、「自分のケースではどうなるのだろう」という細かな疑問がいくつも出てくるものです。
早見表で金額の目安をつかんだだけでは解決しない悩みも少なくありません。
実際に寄せられることが多い疑問を整理すると、次のようなテーマに集中しています。
| よくある疑問のテーマ | 気になるポイント |
|---|---|
| 雇用形態による違い | パートやアルバイトでも同じ金額がもらえるのか |
| 申請手続きの方法 | どこに・いつ・どんな書類を出せばいいのか |
| 他の給付との関係 | 失業保険と同時にもらうことはできるのか |
特に「自分は対象になるのか」「手続きで失敗しないか」という不安を抱えている方は多い印象です。
制度の仕組みを正しく理解しておけば、申請のタイミングを逃したり、本来もらえるはずの給付を取りこぼしたりするリスクを減らすことができます。
ここからは、上記の3つのテーマについてひとつずつ回答していきますので、ご自身の状況に当てはまるものがないかチェックしてみてください。
パート・アルバイトでも傷病手当金の金額は同じ計算?
パート・アルバイトであっても、勤務先の健康保険に加入していれば傷病手当金の受給対象になります。
計算方法も正社員とまったく同じで、「標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3」の計算式がそのまま適用されます。
ただし、パートやアルバイトの方は正社員に比べて月給が低いことが多いため、標準報酬月額も低くなり、結果として傷病手当金の金額も少なくなります。
健康保険の加入条件をおさらいしておきましょう。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 月額賃金が8.8万円以上であること
- 2か月を超える雇用の見込みがあること
- 学生でないこと(夜間・通信・定時制は除く)
- 従業員51人以上の企業に勤めていること(2024年10月以降の要件)
上記の条件を満たして健康保険に加入しているパート・アルバイトの方であれば、傷病手当金を受け取る権利があります。
反対に、勤務先の健康保険に加入しておらず、国民健康保険に加入している場合は、傷病手当金の対象にはなりません。
自分がどちらの保険に加入しているか不明な方は、給与明細で健康保険料が天引きされているかどうかを確認してみてください。
傷病手当金の申請手続きはどこにどう出せばいい?
傷病手当金の申請は、加入している健康保険の保険者(協会けんぽまたは健康保険組合)に対して行います。
申請に必要なのは「傷病手当金支給申請書」で、この書類は被保険者(本人)の記入欄だけでなく、事業主(会社)と療養担当者(主治医)の記入欄もあります。
申請手続きの流れは次のとおりです。
- 協会けんぽまたは健保組合のWebサイトから申請書をダウンロードする
- 本人記入欄を記入する
- 主治医に「療養担当者記入欄」の記入を依頼する(医療機関で記入手数料がかかる場合があります)
- 会社の担当者に「事業主記入欄」の記入を依頼する
- すべての欄が記入された申請書を健保組合または協会けんぽの各都道府県支部に郵送する
傷病手当金の申請書類は、被保険者(本人)の記入ページ、事業主の証明ページ、療養担当者(主治医)の意見書ページで構成されます。 ――全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金支給申請書」
申請は原則として休業期間が経過した後に行います。
つまり「まだ休んでいる最中」ではなく「休んだ期間が確定した後」に申請する形です。
1か月単位で申請するのが一般的ですが、まとめて数か月分を申請することも可能です。
ただし、申請が遅くなると支給も遅れるため、毎月こまめに申請することをおすすめします。
なお、傷病手当金の時効は支給対象日ごとに2年間です。
2年を過ぎると申請する権利が消滅してしまうため、後から気づいた場合でも早めに手続きを進めましょう。
傷病手当金と失業保険(雇用保険の基本手当)は同時にもらえる?
結論として、傷病手当金と失業保険(雇用保険の基本手当)を同時に受け取ることはできません。
この2つの制度はそれぞれ目的が異なるためです。
| 制度 | 目的 | 受給の前提 |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 病気やケガで働けない期間の所得を保障する | 働けない状態であること |
| 失業保険(基本手当) | 再就職の意思と能力がある離職者の生活を支援する | 働ける状態で求職活動をしていること |
傷病手当金は「働けない」ことが前提であるのに対し、失業保険は「働ける状態で仕事を探している」ことが前提になっています。
この2つの条件は同時に成り立たないため、併給は認められていないのです。
退職後も傷病手当金を受給している方は、ハローワークで失業保険の受給期間延長手続きを行っておくことが重要です。
失業保険の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間ですが、病気やケガで30日以上働けない場合は最大3年間(合計4年間)まで延長できます。
- 傷病手当金の受給が終わったタイミングで、改めて失業保険の申請ができる
- 受給期間の延長手続きをしておかないと、失業保険を受け取る権利自体が失効してしまう
- 延長手続きは、働けない状態が30日を経過した翌日以降にハローワークで行う
傷病手当金を受け取っている間は失業保険の受給を「先送り」にしている状態だと考えるとわかりやすいでしょう。
体調が回復してから就職活動を始め、そのタイミングで失業保険を申請すれば、どちらの制度も無駄なく活用することができます。
休職中のお金の悩みは一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも大切です。
傷病手当金の計算や家計の見直しについて相談したい方は、こちらのサービスをぜひチェックしてみてください。

